エルが、タオルで足を拭いている間、ホテルマンはクロエに声を掛け、ボストンバックに手を入れて彼女の頭を撫でていた。彼は続いて風呂敷から小さなクッションを取り出すと、バッグの中のクロエの寝心地の質を向上させ、満足げにボストンバッグをエルへと手渡した。

 その様子をじっと見つめていたログが、「ちょっと待て」と怪訝な顔でホテルマンを呼び止めた。

「お前、どこからタオルやらクッションやらを取り出してんだ?」
「必需品は全て、この風呂敷の中に収まっておりますよ?」
「明らかに風呂敷以上の物がごっそり出てるだろうが」
「はて、そうでしたかねぇ」

 ホテルマンは首を傾け、とぼけた笑い声を続かせた。

 ログの眉間に深い皺が入ったが、スウェンがぎこちなく彼の肩を叩いてこう言った。

「あまり追及しない方がいいよ。きっと余計面倒な事になりそうだし、僕の方にまで話が振られる可能性がある。僕は、ビジネス以外のやりとりを彼とはしたくない。最小限にとどめたいんだ」
「……そんなんでいいのか、お前」

 そこまでホテル野郎が苦手なのか、とログが目で問い掛けたが、スウェンは視線すら合わさなかった。