「空気の質が透き通るほど清浄で、だからこそ【安定した聖なる土地】と呼ばれているようです。その為、空の青も、ひどく澄んでいるのだと『街』の人達はおっしゃっておりました。どうも、そこは神聖な場所として崇められているようです。――今は駅までの道のりに危険が蔓延しているため、隣の『街』に向かう人もいないのだとか」

 ホテルのラウンジで軽く腹ごしらえを済ませた後、エル達は必要な買い物を済ませた。西部劇に出てきそうな雰囲気を残したこの町には、武器屋もあり、スウェン達はそこで各自入り用な物を購入していた。ホテルマンは売買に成功したらしく、彼の風呂敷はだいぶ小さくなった。

 町を出ると、平坦な野原に一本の蛇行した道が続いた。

 日差しは柔らかかったが、次第に身体が汗ばんで来た。先に進むと、平原は湿地帯へと移り変わり、葉肉の厚い緑の木々が目立つようになった。

 エルは、コートの袖をまくった。クロエの重さは特に気にならなかったのだが、途中、ホテルマンがクロエを抱いて歩きたいと言い出した。

 どうやらクロエは、ホテルマンに懐いているようで、自ら彼の腕に飛び込んで抱えられていた。クロエを抱えている間、ホテルマンは静かだった。

 スウェン達は、出来るだけ疲労を最小限にとどめるよう口数が少なくなっていた。先頭にはスウェンとログ、すぐ後ろにセイジがおり、少し距離を置いて、エルとホテルマンが続いた。