言葉も出ないスウェンの肩に、ログが労うように手を置いた。

「ほらみろ、こいつは人の話しなんか全然聞かねぇ野郎なんだって。お前が話してる間に、そこの店員にシャワーと乾燥機の手配までしてたんだぜ」

 場の空気を乱さないよう、ホテルマンに手短に用件だけ頼まれていたホテルの女性従業員が、建物から戻って来て、一同にニッコリと微笑みかけた。

「シャワー室が空いておりますので、どうぞ。お洋服につきましては、シャワーを浴びられている間に、係りの者がきれいに致します。そちらのボストンバッグにつきましても、丁寧に洗い乾かせて頂きますね」

 爽やかに語るスチュワーデスのような、長身の日系美人の微笑みの前で、スウェンが大きな溜息を一つ吐いた。

          ◆◆◆

 プールの利用者向けに用意されていたシャワールームは、男女で仕切られ分けられており、エルは、シャワー室の前で一旦スウェン達と別れた。

 男性用のシャワールームとは天井が繋がっていたため、エルはクロエと暖かいシャワーを浴びながら、ホテルマンの「ぶひゃひゃひゃひゃ」と笑う声や、途中何事かを主張する男達の大声が気になって仕方がなかった。

 シャワールームには他の利用客もいたが、全部で二十ある個室には、三、四名の利用者しかいなかった。シャワーで体が温まった頃に脱衣所に戻ると、きれいに乾かされた衣服とボストンバッグが用意されていた。

 エルがシャワーを上がると、既にスウェン達が出入口で待っていた。

 スウェンとログは、憔悴しきっている様子だった。ログは、ホテルマンをジロリと睨み付け、苦み潰したような顔で「ガキじゃあるめぇし」と愚痴っていた。ホテルマンは、どんな場所にであっても落ち着きがないようで、彼は近くの女性グループの中で、日焼け止めクリームについて熱く語り合っていた。