ホテルマンは、自身の記憶を辿り寄せるように首を傾けた。

「そうですねぇ、【安定した聖なる土地】は、生物が派生しない区域だそうで、誰が作ったかも分からない、――それはそれは美しい列車が停車する場所、だとか。まぁ、ホテルの警備員の話しだと、そういう事でしたけれどねぇ」

 ホテルマンが、僅かに含み笑いをこぼした。彼は唇に弧を描くと、スウェンを挑発するように見やった。

「しかし、お客様達も随分遠くまで来ましたねぇ。ただの旅行者には思えないほど、遠くまで……隣の『街』に、何か入り用でもおありですか?」
「僕らは、女の子を迎えに行く為に先へ進んでいる」

 その時、ログが「おい」と止めるように超えを掛けたが、スウェンは目配せで彼を黙らせた。

「悪い奴らが、一人の女の子を連れて去って行ってしまってね。彼女は安全な場所にいるらしいけれど、そこから連れ出せる者がいない。連れ去った犯人がいる土地で、彼女は見動きが取れないから、そいつを退治して彼女を連れて帰るのが、僕らの目的なんだよ」

 スウェンは神妙な顔でそう語った。だから、他人が踏み込める事情ではないのだという事は、台詞だけでなく、その真剣な眼差しからも伝わった。

 しかし、スウエンの意に反して、ホテルマンの表情が輝いた。