「面接の時点で落ちてしまいましたがね! いずれホテルを乗っ取ろうなんて誰も告白していないのに、警戒心の強いホテルは良い接客が出来ない事を知らないんですかねぇ。ねッ、小さなお客様!」
「えッ、なんでそこで俺に話を振るのさ……?」
「ログ、僕が許可する。今すぐ彼をプールへ沈めてしまいなさい」
「おいおい、落ち着けよ、スウェン隊長。大人な対応で行こうぜ」

 エルの後ろに隠れるスウェンの、ニコリともしない眼差しを尻目に、ログが若干の冷静さを取り戻してそう言った。

 ログは頬に滴る水滴を手の甲で拭いうと「おい、お前」と、非常に嫌そうな渋面でホテルマンに向き直った。ログは親指を立てると、それを下に向け、首の前で一本線を引いてこう続けた。

「さっさと俺の視界から消え失せろ」

 大人の対応はどこへ行ったんだよ。

 エルは呆れてしまい、自分の背後に隠れるように立つスウェンを盗み見た。彼はエルの肩を軽く掴み、若干背を屈めてホテルマンを窺っていた。エルは、この二人は駄目だな、思ったが口には出さなかった。