ログが耳に入ったらしい水を落とし始め、エルも、頭を振って大まかな水気を弾いた。スウェンが一同の無事を確認し、ポケットに入っていた探査機を取り出した。

「やれやれ、ここへ来て電源が入らないとはね」
「大丈夫なのか?」

 セイジが遠慮がちに尋ねた。スウェンは、探査機をポケットに戻しながら「なんとかなるよ」と答えた。

「乾けば電源も入るだろう。所詮は仮想空間に転送した道具だから、壊れる事はないと思う」

 スウェンは自信たっぷりに断言したが、振り返りざま、ログの肩越しに目を止めた途端、ギクリと顔を強張らせた。

 珍しい反応を見て取ったログが、「どうしたんだ」と怪訝な顔で問い、背後を振り返り、――同じように顔を引き攣らせた。エルとセイジは、彼らの反応に既視感を覚えて、同じ方角へと目を向けた。

 そこにいた人物に全員が目を止めたところで、しばし沈黙が漂った。


「これはこれは、親切なお客様達ではございませんか!」


 一同が目を向けた先には、非常に嘘臭い喜びの表情――とはいえ、目が開いているかいないかも不明瞭な薄い顔立ちなので、彼からそういった感情を読み取るのも非常に困難ではあるのだが――を浮かべた、あのホテルマンが立っていた。