エルは首を捻ったが、スウェンからもう一度促されて、こちらに手を伸ばしてきたセイジの手を掴んでプールから上がった。そのすぐ後ろから、ログが大きな水しぶきを上げて後に続いた。

「彼女は、すごいな。賢くて落ち着いている」

 エルの身体に大きな怪我もない事を確認し、セイジがそう褒めた。エルは、彼からボストンバッグを受け取りながら、誇らしげに肯いた。

「うん、クロエはとびきり賢くて、美人な猫なんだ」

 セイジは「そうか」と言って微かに微笑んだ。クロエを一人の女性として扱ってくれるような台詞が嬉しくて、エルも「ありがとう」と答えて柔らかい笑みを返した。

 エルにとって、クロエはまるで母親や姉のような存在でもあった。


 エル達が着水したリゾートホテルのプールには、エル達の他に、三組の親子らしき客がいた。

 この世界では、現在お昼の落ち着いた時刻であるようで、広いプールサイドには他に人の気配はなく、丸い浮輪を浮かべてプールに入っている数人の宿泊客がいるばかりだった。皆アジア系寄りの顔立ちをしており、肌は白かった。