というか、テーブルにぶつかったのは俺のせいじゃなくね?

 それはログ自身の注意が足りないせいであって、何故そこで自分の名前が出てくるのだろうか、とエルは顔を顰めた。

「仕方ないだろッ、俺だって、泳いだ事なかったのうっかり忘れてたの! そもそも、落ちてる時にそんな事告白する時間なんかないもん!」
「何が『もん』だよ。ったく、猫介の奴は、利口に自分でチャックを開けて泳いでもいたってのに――」
「猫介じゃなくて、クロエ! 猫介って、まんま男の名前じゃんッ。なんつう失礼な――」
「はいはい、そこまで」

 その時、頭上からスウェンが二人に声を掛けた。

「二人とも、さっさと上がっておいで。まずは無事を祝わなきゃね」

 先にプールを上がっていたスウェンが、前髪をかき上げて苦笑した。ボストンバッグを抱えたセイジの足元では、身震いで大まかな水気を払ったクロエが、忙しそうに毛繕いを行っていた。

 良かった、クロエは無事だ……

 思わず安堵の息をこぼした時、支えてくれているログの腕にぐっと力が入り、半ば彼の方へ押しつけられて、エルは訝しげにログへ視線を戻した。ログはむっつりと顔をそらしているばかりで、追って文句を言ってくる事もなかった。