恰好良いな、というのが第一印象だった。

 エルが、決意の揺るがない背中で「守る」と言ってくれた時、こんな風になりたいなと思った。

 話してみると面白く、友達になれるだろうかと考えたりもした。もっと一緒にいられたらいいのにと願った。エルが生身の人間である事には驚いたが、心配されて声を掛けられるたび、その想いは静かに募っていた。

 『夢人』が、『宿主』でもない生身の人間と友達になれるはずがない。そもそも、――と少年は、別件について頭を悩ませた。

 彼は一体どうしたのだろう?

 本来魂が収まっているべき場所に、余分な溝が空き過ぎて、ひどく不安定になっている事に少年は気付いていた。計れぬほど深い底なしの中身に、本来収まるべき『核』となる力の不在を感じた。

 胸元から聞こえる崩壊の音を、彼らは気付いてしまっただろうか。

 別に悲しい事ではない。この世界で与えられた形が消えて、重い殻を脱ぎ捨てて本来の『夢人』として『理』の世界に還るだけだ。悲しみではなく旅立ちなのだと、そう伝えられなかった事が、少し残念だった。

 誰もいなくなったビーチで、少年は不意に、自分の世界に入り込む侵入者の気配を察知した。そして同時に、伽藍だったはずのエルの器に、隙間なく収まりきる強大な何者かの意思に気付いて、悟ってしまった。