スウェンも、一体どういう心境の変化があったのだろう。

 笑う彼の横顔から視線をそらし、エルは首を捻った。スウェンは交信を始める前、エルに「君も一緒にどう? 疑問があれば、直接彼らに聞くといいよ」と声を掛けた。ログとセイジも驚いた顔をしていたし、問われたエル自身も、予想外の誘いに対し「内部事情だから……」とぎこちなく断りを入れたのだ。

 大人達が向こうにいってしまってから、クロエは、久しぶりにプライベートな時間を楽しんでいるようだ。やけに調子良く砂地の上を歩き回っていた。

 クロエは、寄せては返す波を堪能した後、少し離れたところまで歩き、また踵を返してエルの元まで早足で戻って来るという、少し謎めいた行動を上機嫌な面持ちで繰り返していた。柔らかい砂地の上に肉球を潜り込ませながら、確かな足取りで浜辺を闊歩する。

「昔は、あんなに走り回っていたのにね」

 エルは、手に付いた砂を払うと、戻って来たクロエの頭を撫でてやった。

 もしクロエが元気な身体であれば、一緒に、この砂浜を一走りしていたかもしれない。岩場までの距離を自分の足で確かめ、砂の柔らかさを楽しみながら、押し寄せる波に足を浸して駆け抜けるのだ。