まさかと彼が考えをまとめている間にも、そこには、早急にインストールが完了したように滑らかさで、続けて文字が入力された。


――【エリス・ブログラム】の防衛決壊・膨張数値二十八パーセント・オーバー。施設内九割りの浸食ヲ検知。【亡霊】の完全遮断、正常起動を確認。【ナイトメア・プログラム】ニテ、防衛システム展開ヲ始動。


「……おい、ハイソンさん、こりゃあ一体何です?」
「聞いた事がないプログラムだが、恐らく所長が何か知っていると思う……この部屋にいる人間だけが無事である理由も、きっと、こいつが原因なんだろう」

 ハイソンは、そこでクロシマ達を振り返った。

「少しだけ、俺の話を聞いて欲しい。俺が、所長とこの研究に携わっていた時に体験した奇妙な出来事と、先程あった事……どうやら、無関係ではないと思えてならないんだ。君達の知識を借りたい」

 口下手な彼は、まるで大学の講師のように手短に要点をまとめながら、部下の前で初めて、若き日の優秀な研究生時代を思わせる様子で、半ば饒舌に語り始めた。