一瞬後、二人は危険を察知し無我夢中で走り出していた。

 背後で扉が吹き飛び、泥水のような半透明の身体を持った二頭の獣が、その後を追い駆けて来た。

「き、来たぁぁぁあああ!」
「ハイソン! いいから前だけを見て走るんだ!」
「そ、そそそんな事言われたって、俺は走るとか全然無理なんだよッ」
「あれに喰われるよりマシだろう! とにかくラボまでッ、死ぬ気で走れ!」

 先輩兼上司に対する敬語もすっ飛ばし、クロシマは、ハイソンに激を飛ばした。

 二人の背後で、一頭の獣が身体の重心を低く身構えた。クロシマがそれに気付き、ハイソンの腕を掴んで、素早く引き寄せた。

 進行方向からやや左にそれた二人の脇に、跳躍して来た獣が頭から突っ込んだ。
勢いよく飛び込んで来た化け物は、ミサイルの如く一直線に廊下の壁に頭を打ち付けると、柔らかい安定感のない半透明の身体の半分を重力に押し潰され、壁にべしゃりと張り付いた。

「……うげぇ、まるでアメーバのようっすねぇ」

 ハイソンの腕を掴んで走り出しつつ、クロシマが、後方を確認してそう感想した。