「妙な造りになっちまってますね。あんたが、ほとんど言葉を発しなくなってから、ますます変になっているんですよ。いつまで経ってもラボに辿りつけやしない」

 それに、とクロシマが横目でハイソンを見た。

「さっきから、妙な幻聴も聞こえるみてぇですよ。これって、俺の不眠症ゆえの幻聴なんですかね」
「幻聴……?」

 クロシマが確認を促すように立ち止まったので、ハイソンは、どうにか自身の足に力を入れる努力を行いながら耳を澄ました。

 辺りはやけに静かで、耳鳴りが煩かった。

 耳を済ませてしばらく、不意に、どこからか女の子の笑い声が聞こえたような気がして、重い眠気に絡め取られていたハイソンの思考は、急速に覚醒した。急行直下の如く彼の胃が痛み始め、激しい痛覚が背中を突き抜けた。

 ハイソンは胃の辺りを腕で抑えると、クロシマの肩に回している手で激しく訴えた。

「ク、クククククロシマ! い、今のは何だ!?」
「――あ。そういえばハイソンさん、幽霊とか駄目でしたっけ」
「ゆ、幽霊だと!? ここは幽霊が出るのか!」
「落ち着いて下さいよ。あんた、ゾンビやキョンシーは平気じゃないっすか」
「それとこれとは恐怖の次元が違うんだ!」

 ハイソンは、緊急事態が発生している現実と、心霊の恐怖に「ぐぅっ」と呻き声を上げて腹を押さえた。忌々しいぐらいに、腹が余計に痛んだ。

 一時的な強い痛みの波が一旦去ると、胃の辺りが締め上げられているようにキリキリと軋んだ。クロシマは、そんなハイソンを横目に、いまいち恐怖の度合いが掴めないような顔で「そうっすかねぇ」と心ない言葉をもらした。