悠長な四人を脇に、エルは強い眩暈まで覚え始めていた。落下で身体のバランスが上手く取れないし、先程から視界が上下して気持ちが悪い。何でもいいから、早く地面に無事辿り着きたいと思った。

 その時、エルは少年に伝えやすい子共じみた発想を思い付いた。何もないよりはましだろうと思え、エルは、少年と男達に向かって叫んだ。

「クラゲの風船とかは!? 砂浜まで飛ばしてくれるトランポリンみたいなやつ!」

 すると、少年が緊張感の抜けた顔で「なるほど」と相槌を打った。

「それ、面白そうだね」

 そんな彼の呟きが上がった瞬間、エル達は柔らかい場所に落下していた。

 それは大きく弾むと、エル達の身体を再び飛ばし上げた。一同が飛ばされた海面の先には、別の大きな空気袋が浮かんでおり、一同はバウンドする衝撃に非難の声と悲鳴を上げながら、次々に巨大な風船の上を進んで行った。

 落下地点は海上であったが、トランポリン形式でどんどんエル達は移動を続け、あっという間に白い砂浜が目前に迫った。

 まずは、ログが柔らかい砂地に顔面から突っ込んだ。スウェンが受け身を取るように体勢を整えて上手く着地し、素早く振り返ってセイジに合図を出し、クロエの入ったボストンバッグを受け止めた。

 その直後、セイジが身体を捻ってスウェンの隣に尻から着地し、続いて飛んで来るエルを受け止めるべく身構えて、抱き込むように全身で受け止めた。

 最後に飛んで来たのは、例の少年だった。彼は、砂地に頭から突っ込んだログの背中に衝突するように着地し、彼の頭部を更に砂の中に押し込んだ。

 ああ、これは死んだな。

 その光景を目撃してしまったエル達は、視線もそらせずに沈黙した。少年は状況を把握していないのか、尻の下にログを埋めたまま、楽しそうな顔で笑った。

「俺、こんな事も出来たんだなぁ」

 くふくふ、と少年が続けて含み笑いした。

 肩まで砂に埋まった大男の身体が、途端に怒りでぶるぶると震え始めた。