続けて説明された言葉に、エルは今一度三人の外国人へ目を向けた。どうやら、今ここに立っているメンバーの中で、傷を負っている者もいないようだと知る。

 あれだけ派手に暴れたのであれば、衣服や身体に汚れがあっても不思議ではないはずだが、エル自身も汗一つかいていなかった。

 室内でコートを着ているのに、全く暑苦しさも涼しさも覚えない。食べた料理の内容も、既にエルは思い出せなくなっていた。

「……じゃあ俺は、人を殺してしまったわけではない……?」
「あはははは。本物の人間は、そう簡単に死なないよ。殺すのって、結構面倒で大変な作業なんだから」

 金髪の男は、さも可笑しそうに笑った。日本人風の男が困惑したように隣の大男に視線を向けると、彼は顰めた顔をそらしつつ舌打ちした。

「おい、スウェン。そいつは本当に、この世界のエキストラじゃないのか」
「違うと思うよ。ココと現実世界では時間差があるから、もしかしたら最後に巻き込まれた一般人の可能性もあるね。――まあ、後でハイソンの方で調べてもらうよ」

 そこで、金髪の男がくるりとエルを振り返った。

「ひとまず、【仮想空間エリス】へようこそ、少年」

 その時、腕を広げる金髪男とエルの間から、クロエが鞄を引っ張って四人の前に現れ、和やかな声色で「にゃー」と鳴いた。