「痛くない……?」

 エルは、恐る恐る少年に尋ねた。少年は「ううん、ちっとも」首を左右に振って答えた。

「『主』を抱えて無我夢中で走り回っていたら、こうなっていたんだ。主の命が旅立ってしまって、この世界で俺の姿も崩れ始めているみたいだ……本来であれば『死に抱かれる者の夢』まで、俺が導かなくちゃならないらしいんだけど、主は身体だけを置いていってしまったし、どうやってその場所まで行けばいいのか、これからどうすればいいのか、俺にはまだ分からなくて」
「命のないものであれば、ログならその枷を壊す事が出来る」

 スウェンが、顎先でログを指名しながら、少年に教えるようにそう言った。

「彼が触れて、力を発動させれば全てが終わる。けれど君の『主』の身体は、そこから消えてしまうだろう」

 エルとセイジは、お互い視線を交わしてしまった。少年の様子を見ていると、無理やりそれを実行するような展開は避けたいとも感じていたからだ。

 ログはスウェンの指示を待ちように、仏頂面で少年を眺めているだけだった。