まるでファンタジーであり、壮大な空想物語を聞かされているようだった。

 これまで通って来たセキュリティー・エリアにも、彼のような夢人はいたのだろうか。もしかしたら、彼らとどこかで擦れ違ったかもしれないし、言葉を交わしたかもしれないなと、エルはそんな事を思った。

 少年が、エルに向かってぎこちなく笑い掛けた。エル達のこれまでの経緯を知らない少年は、「外の人間にとっては、色々と分からない事だらけかもしれないけど」と、乾いた声を上げた。

「こっちの世界にもルールがあって、きっと、もっと色々と複雑なんだ。でも確実に言える事は、『主』が死んでしまったのに、それでも俺とこの世界がそのまま続いている事は異常なんだよ……俺は痛いのも、怖いのも嫌だし、どうしたらいいか分からないんだ」

 その様子を見たスウェンが、思案するようにこ尋ねた。

「もし、君の言う『主』がその命を終えたら、君とこの世界は、本来はどうなるはずだったんだい?」
「――『主』が死ねば、この世界はなくなる。俺は『主』の魂と心を『死に抱かれる者の夢』を辿って導いた後、この世界を作りだしている『夢の核』を持って『理』に還る……それが、俺が知っている筋書です」

 そう答えた少年の瞳に、再び涙が浮かんだ。スウェンは、彼の向かい側で腕を組んで考え込んだ。