「でも、大きな木に宿る力は強大だから、伸びた枝先に触れる事が出来る生物にも、強い影響を与えてしまいます。過去を視たり、未来を知ったり、相手の心に入り込んで、思考を変えてしまったり――でも枝先の実は、触れている生物の中でしか育たなくて、俺達は『その実』が健やかに育つよう見守るんです」

 少年は例え話で上手く説明してくれたつもりらしいが、理解が及ばない話である事に変わりはなく、場にはしばし重い沈黙が漂った。

 ログは早々に苛立ち始めており、眉間の皺は最悪だった。スウェンは何とか理解に追いつけているようだが、セイジの方は本能的な何かでおおよそを把握したのか、三人の中で唯一、緊迫感のない、のんびりとした表情で考え込んでいた。

 少年が一息ついたところで、エルは質問してみた。

「つまり、あなた達は一人一人意思を持っている、『夢』の中の住人って事でいいのか?」
「まぁ、そうだね。簡単に言うと『夢』の世界に住んでいる人って事なのかな……」

 少年は、『夢人』としての存在意義について説く事を諦めたように、肩を落としつつ、話を続けた。