「自分の世界って、――もしかして、この仮想空間の事かい?」

 スウェンが慎重に尋ねると、少年は訝しそうに顔を上げて「仮想空間?」と口の中で反芻した。

「ここは、俺の主の『夢』世界です。基本的に『夢人』は、主の心が大きく揺らいだ時以外、自分の世界を離れられないけど、俺は未熟だから、もしかしたら夢人の癖に『悪夢』を見ていただけなのかもしれないって、そう思いたかったんですけど……」

 脈絡なく話し続ける少年の口から、小さな嗚咽がもれ始めた。

「この世界が不安定になっていたから、おかしいなと思って『夢の核』を確認しに行ったら、変わり果てた『主』の身体を見付けたんです。ここは彼の世界なのに、どうして現実世界の器があるのか分からなくて、その間に外から強い力で押さえつけられてしまって、俺の意思に全く従わないエキストラ達が現れ始めました」
「この世界のエキストラは、本来君の意思に従い、君の意思が絶対にもなりうるという事だろうか?」

 セイジが、困惑を浮かべつつ尋ねた。