四人は市場を後にすると、近くの林道に入った。南国の木々が並んでおり、ちょうど良い日陰が出来ていた。木々の向こうには畑が広がり、下った先に海岸がある。

 それぞれ芝生の上に腰を下ろし、水分補給を行った。走り回ったせいか、ボストンバッグの中から出て来たクロエは憔悴しており、エルはバッグを掛けたまま慌ててしまった。セイジが暑さと水分不足に加えて目が回ってしまったのだろうと宥めるように言い、先程の市場まで走って引き返し、牛乳を一瓶買って来てくれた。

 クロエは牛乳を半分飲むと、満足げに木の傍に腰を落ち着けて丸くなった。海からの風が涼しい事もあり、四人と一匹は、しばし疲労した身体を休めた。

 身体の熱が収まった頃、ログが少年を叩き起こした。

 先程果汁を顔面にかぶったはずの少年の顔には、水分の一滴も残ってはいなかった。少年は目を覚ますと、目前に迫ったログの真顔を見て悲鳴を上げたが、ログが「うるせぇ」と軽く頭を叩くと、黙った方が得策だという事に気が付いたように口を噤んだ。

「――で、お前は一体何者なんだ」

 ログが率直に尋問すると、少年は、一層怯えた眼差しで彼を窺い見た。直視する事に耐えかねたのか、視線をスウェンへ、それからセイジへと泳がせる。

 少年は辺りを窺ってようやく、大人達の向こうエルがいる事に気付いたようだ。
彼はエルと視線を合わせると、少し安堵の表情を浮かべて胸を撫で降ろした。エルのそばで寝ているクロエに目を向け、「あ、可愛い」と癒された表情を見せ、――ログとスウェンに視線を戻して、途端に世界の終わりのような顔をした。

「あ、あの、おおお俺を四分の一個殺しちゃうんですか」
「お前の頭ん中は一体どうなってんだよ。顔がいちいち騒がしい奴だな」