「僕らは優しいお兄ちゃんだよ~。多分、今立ち止まってくれれば、この怖いおじちゃんも四分の一殺しぐらいで済ませてくれるからさ」
「いぃやぁぁああああ!」

 前方を走る少年が、途端に首を激しく左右に振って悲鳴を上げた。

「そんな事言って、お兄さんも四分の一個、俺の身体を使い物にならなくさせるんでしょッ!? そんなの怖過ぎるよぉぉおおお!」

 少年は更に怯え、走る足に力を込めた。

 スウェンが「おかしいなぁ」と、困った表情を浮かべた。

「僕、結構優しく話しかけたつもりなのに……」
「お前の後ろに本音の顔が見えたんだろ。悪魔の本心ってやつが」
「え、それどういう事? ちょっと聞き捨てならないんだけど」

 ログを見つめ返したスウェンの目は、笑っていなかった。

 そんな二人を後方から追いながら、エルは「大丈夫かなぁ」と心配に思った。先程、スウェンから「僕は長時間のマラソンが苦手なんだよね」と打ち明けられたばかりだったので、彼の方もログと同じぐらい、今の状況を腹立たしく思っている可能性が高いと察していた。