近距離で銃弾を受けた男の頭から、頭蓋骨を銃弾が貫通するような鈍い音が上がった。男は二、三歩、危うい足取りで後退し崩れ落ちた。

 エルは立ち上がり、男の死体を見降ろした。動悸と荒い呼吸の為に、エルの細い両肩は大きく上下していた。降ろした右手に持った拳銃が、手の震えに合わせてカタカタと音を立て始めた。

 訓練を受けた事はあるが、人を殺したのはこれが初めてだった。

 気付くと、辺りは怖いほど静まり返っていた。銃声の嵐は、いつ止んだのか。

 エルは、ガラスの破片を靴の底で踏む足音が聞こえ、ハッとして顔を向けた。そこから、場違いなほど陽気な声が上がって、馬鹿みたいに緊張感のない男を見て目を丸くする。

「君、すごいねぇ。僕が助ける間もなかったよ」

 いやあ、もう間に合わないかと思ったね、と耳に心地よいテノールで金髪碧眼の男が言った。彼は涼しい顔で、使用済みの銃器をその辺に投げ捨てた。