クロエは、害のない人間には爪を立てたりしない猫だ。少年の涙を止める為か、エルが声を掛ける前に、一役買う事にしたらしいクロエが、エルに一度目配せし、手をひっこめた少年の膝に己の頭をすり寄せて「ニャーン」と可愛らしい声で鳴いた。
少年は感激したのか、クロエの頭を撫で、続いて背中も撫でて幸せそうに表情を綻ばせた。
エルは、近い距離から少年を改めて観察した。背丈は、エルよりも頭一個半ぐらいは高い。外国人風なので、年齢的にはもっと若い可能性はあるが、とりあえず自分よりは年下ぐらいだろうと考えた。
クロエと親睦を深めた少年は、すっかり警戒心を解いてくれたようだった。彼は、思い出したように怯えた目で外を見やったが、異変のない様子を確認すると、ほっと胸を撫で下ろした。
「君も、誰かに追われたの?」
「え? どうして俺が誰かに追われたと思ったの?」
エルが驚いて尋ね返すと、少年が、困ったように言い躊躇った。
「俺、変な奴らに追われているんだ。鼠の顔した奴らなんだけど……」
エルは、しばし返す言葉に困った。
自分が置かれている状況を改めて頭の中で整理し、先程の出来事について順を追って思い出した後、思わず「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
少年は感激したのか、クロエの頭を撫で、続いて背中も撫でて幸せそうに表情を綻ばせた。
エルは、近い距離から少年を改めて観察した。背丈は、エルよりも頭一個半ぐらいは高い。外国人風なので、年齢的にはもっと若い可能性はあるが、とりあえず自分よりは年下ぐらいだろうと考えた。
クロエと親睦を深めた少年は、すっかり警戒心を解いてくれたようだった。彼は、思い出したように怯えた目で外を見やったが、異変のない様子を確認すると、ほっと胸を撫で下ろした。
「君も、誰かに追われたの?」
「え? どうして俺が誰かに追われたと思ったの?」
エルが驚いて尋ね返すと、少年が、困ったように言い躊躇った。
「俺、変な奴らに追われているんだ。鼠の顔した奴らなんだけど……」
エルは、しばし返す言葉に困った。
自分が置かれている状況を改めて頭の中で整理し、先程の出来事について順を追って思い出した後、思わず「はぁ?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。