エル以外のメンバーは、既に一階ロビーへ到着していた。先に降り立ったスウェンが、どうやら派手にボズーカ砲を放っているようだ。

 一階は爆炎の匂いが立ち込め、辺りは、エキストラが逃げ惑うというパニック状態になっていた。しかし、一般人の姿は先程に比べて遥かに少なく、大半が鼠男となっていた。

 騒ぎの中、エルは、フロアの中央辺りにセイジの姿を見付けて、目を止めた。セイジは素手で鼠男達を掴んでは、辺り構わず投げ捨てていた。まるで、小さな生き物の如く宙を舞う鼠男達の行方を、エルは思わず目で追ってしまった。

 不意に、エルはある光景に気付いて――「嘘だろ」と血の気が引いた。

 セイジの後方を逃げ惑っていた赤毛の少女が、突然逃げる足を止めたかと思うと、全身を震わせた。その身体は次第に大きく膨れ上がり、顔は動物の体毛に覆われて始め、続いて鼻先が尖り、白い隊服に鉄製の槍を持った鼠男へと転じていた。

「セイジさん、危ない!」

 エルは、叫ぶと同時に駆け出した。自分に向かって襲いかかる鼠男達を素早く蹴ちらすと、勢いよく床を蹴って飛び上がり、セイジの背中から襲いかかろうとした鼠男に、強烈な後方蹴りを入れて弾き飛ばした。

 息を吐く間もなく、エルに向かって別の鼠男が襲いかかった。

 エルは着地した瞬間、コンバットナイフを煌めかせて鼠男の首を切断した。良い切れ味のナイフだと思った。血さえ噴き出さない鼠男の肩に着地し、エルは一旦、武器を口に咥え持った。

 辺りの状況を瞬時に把握しつつ、エルは宙へと舞い上がり、一体、二体、三体、と瞬発力を活かして足を振り上げ、オジサンに一番威力があると褒められていた蹴り技で、続けて鼠男達の脊髄を折っていった。

 数体の鼠男を片付けた後、エルは着地してようやく、コンパットナイフを革鞘に収めて、呼吸と体制を整える事が出来た。