素早く状況把握を終え、エルは一階を目指すべく階段へ向かいながら、鼠男によって突き出される槍を避け、主に蹴り技を使って、相手の腹部や背骨を強打し再起不能にし、廊下を駆けた。

 エルは、下り階段のある場所まで来たところで、立ち塞がる鼠男達の懐に飛び込び、コンバットナイフで次々に切り裂いた。しかし、いくら倒しても鼠男達は目の前に立ち塞がり、正規の使い方で階段を下るのは無理そうだった。

 そう考えたエルは、ボストンバックを手で引き寄せると、「クロエちょっと揺れるからッ」と一声かけて、床を蹴って宙返りし、邪魔な鼠男を複数蹴り上げつつ、階段の手すりに着地して滑り下りた。

 手すりの上を少し滑り下り、エルは、襲いかかって来た別の鼠男の顔を蹴り上げ、その反動を使って飛び上がった。進行経路に立ち塞がった別の鼠男の両肩に着地し、素早く首をへし折る。

 その一体が崩れ落ちる間際、エルは、階段の状況を改めて確認した。

 徒歩での突破には時間がかかると判断し、階段の縁に両手をついて自身の身体を持ち上げ、回転をつけて別の鼠男の顔面と頭部を踏み台にして、彼女は三メートル下の階段中腹まで飛び降りた。

 階段に着地した瞬間、両サイドから別の鼠男たちが飛びかかって来たが、エルは、コンバットナイフを素早く持ち構えると、華奢な身体を回転させながら、彼らの首の腱を素早く切断していった。

 鼠男達は、血を流す事無く次々に倒れていった。

 その時、クロエが警戒の声を上げた。階段の下から新たな鼠男が出現し、エルを後ろから羽交い締めにしたのだ。

 エルは咄嗟に身を屈めると、後方の鼠男の腹部にコンバットナイフを突き刺した。身体が自由になったチャンスを逃さず、後方からぞろぞろと現れた鼠男達に向かって、すぐさまその鼠男の身体を蹴り飛ばすと、大きく跳躍して、次の階で待ち構えていた鼠男達の頭を次々に踏み台にしながら、一階ロビーを急ぎ目指した。