「おい、クソガキ。外は今どうなっているのか分からねぇが、バラけた方がいい場合は、敵陣地から脱出する事だけを考えて動け。迷子になりそうだったら、誰かについていればいい」
「マジでぶっ飛ばすぞ。方向音痴なお前に言われたくないんだけどッ?」

 エルが睨み付けると、ログが不敵な笑みを返した。

「ま、お手並み拝見ってところだな。せいぜい、死なねぇように頑張れ」

 ログは手をひらひらとさせると、口径の大きな銃を引き抜いた。

 スウェンが「よいしょ」と、またしてもいつ取り出したのか分からないバズーカ砲を構え、おもむろに出入り口目掛けて撃ち放った。

 爆破された扉が激しい爆風を起こし、出入口に大きな穴が空いた。

 消炎と爆風の向こう側で、扉の前にいたらしい複数の鼠男達が、着弾の際の衝撃に吹き飛ばされ、吹き抜けから一階のフロントへと落ちていくのが見えた。

 スウェンの合図と同時に、全員が動き出した。ログを筆頭に、スウェンとセイジが室内を飛び出し、続けて銃撃音が鳴り響いた。

 クロエは既にボストンバックに入っており、エルは、それを肩から斜めに掛けて部屋を走り出た。

 エルが一足遅れて廊下に出た時、既にセイジが腕一本で鼠男達を掴み上げ、そのまま吹き抜けから一階に放り投げているところだった。スウェンがバズーカ砲を抱えたまま階段へと移り、更にその階下からは、別の銃声が立て続けに響いていた。

 建物内には、多くの鼠男が溢れていた。他の客が逃げ惑い、悲鳴と破壊音がけたたましく反響している。

 例の噂とは違い、鼠男達は他のエキストラにも視認出来ているらしい。役者は眼中になく、攻撃の対象はエル達の四人だけのようだ。