「俺は、守られるつもりはないよ。立ち塞がる敵があるのなら、打ち倒して前に進むだけだ。協力するって勝手に決めて、勝手に付いていってるだけだから。――それに俺、スウェンが思っているよりも多分、強いよ。だから、少しの間だけでも俺を信じてよ」

 エルは、ぎこちないながらも笑った。

 部屋の扉は激しく叩かれ続けており、そろそろ蹴破られそうだ。スウェンが立ち上がりながら「オーケー」と呟いた。その眼差しには、普段の冷静さが戻っていた。

「エル君、何か必要な物は?」
「銃じゃなくて、刀かナイフが欲しい。俺は主に体術を使う接近戦タイプで、飛び道具は苦手だから」
「分かった、僕のナイフを貸してあげるよ。大切に使っている物だから、後でちゃんと返してね」

 スウェンは腰元から、焦げ茶色の古びた革鞘に収まったそれを手渡して来た。

 それは持ち手に重みを感じる、通常のナイフよりも大きなコンバットナイフだった。柄が少し太いが、昔オジサンに使わせてもらっていた、ケーバーと呼ばれるファイティング・ユーティリティナイフと似てもいる部分がある。

 まぁ少し使えば手に馴染むだろう、とエルは考え、その革鞘を腰元に手早く設置した。

 その様子を見ていたログが、「いいのか」とスウェンに訊いた。スウェンは視線をそらし、「ああ」と答えた。