これが島神の遣いなのだろうか? それにしては、身体能力としてはそこまで強化されていないキャラクターだなぁ、とエルは他人事のように考えた。

「ヒュー、エル君やるねぇ。想像以上で、ちょっと困っちゃうね」

 口笛を吹いたスウェンが、含むような物言いをしたが、既に彼の視線は、倒された鼠男に向けられていた。

 鼠男を覗きこむスウェンの後ろで、ログが、出入り口の方を見やりつつ頭をかいた。

「――お前、その技、いちよう一般人にやったらアウトな代物だからな。覚えとけよ」
「実践で使った事はないよ」

 エルが記憶している限りでは、使った事はないはずだった。それなのに身体は、考えるよりも先に、まるで使い慣れた事のように動けたのだ。

 過ぎった疑問を、エルは胸の奥へとしまう事にした。きっとそれも、忘れてしまっている記憶に関わる事なのだろう。近いうちに、それを知る時が来る予感もしていた。

 すると、ログがセイジに目配せした。

「セイジ、扉の向こうに何人いると思う?」