「それ、俺初耳なんだけど。この島に神様が祭られているって事?」
エルは、コートの裾が邪魔にならないよう、前ボタンと紐をしっかりと締めた。ログが呆れた眼差しを寄越し、「お前、風呂に入ってただろ」と突っ込みつつ先を続けた。
「言い伝えらしいぜ、その『島神』とやらは。ただ、セキュリティーとして駒にするなら、ちょうどいい配役だろ」
「なるほど」
エルは肯いたが、ふと前回の怪物を思い出して、本音が口からこぼれ落ちた。
「前回みたいな化け物だったら、嫌だな……」
エルとしては、あまり体格差があり過ぎる敵は勘弁したかった。そして、あまりホラーな外見をしていない方を希望している。恐怖物の映画に結びついてしまうようなものは、本当に苦手だった。
ログは、「来てのお楽しみだろ」と面白くもなさそうに応えた。彼にとっても、前回のエリアで登場した、ラスボス級の化け物は対峙したくない相手だった。
その時、エルの耳が微かな音を拾った。
それは、紐が滑るような音だった。第一の来襲はエルの背後にあるテラスからで、音の発生源がテラスに降り立つのと、エルが振り返り様に地面を蹴り上げ、背後に降り立ったその人物の太い首を両足で挟みこむのは、ほぼ同時だった。
エルは来襲者の首を両足で抱え込むと、全体重を掛けて身体を捻り、掴まえた頭部を勢いのまま床へと叩きつけた。
重い響きが床を震わせ、脊髄か首の骨が折れたらしい敵が、抗う術もないまま一瞬で床の上に伸びた。刺客が手に持っていた鉄製の槍が、ガランと音を立てて床の上を滑り落ち、スウェンの足元まで転がる。
エルは体制を整えて初めて、敵の姿を確認した。
飾り気のない真っ白い軍服を着た身体は、東洋人ぐらいかと思われる男のものだったが、その首は灰色の大きな鼠の顔をしていた。
エルは、コートの裾が邪魔にならないよう、前ボタンと紐をしっかりと締めた。ログが呆れた眼差しを寄越し、「お前、風呂に入ってただろ」と突っ込みつつ先を続けた。
「言い伝えらしいぜ、その『島神』とやらは。ただ、セキュリティーとして駒にするなら、ちょうどいい配役だろ」
「なるほど」
エルは肯いたが、ふと前回の怪物を思い出して、本音が口からこぼれ落ちた。
「前回みたいな化け物だったら、嫌だな……」
エルとしては、あまり体格差があり過ぎる敵は勘弁したかった。そして、あまりホラーな外見をしていない方を希望している。恐怖物の映画に結びついてしまうようなものは、本当に苦手だった。
ログは、「来てのお楽しみだろ」と面白くもなさそうに応えた。彼にとっても、前回のエリアで登場した、ラスボス級の化け物は対峙したくない相手だった。
その時、エルの耳が微かな音を拾った。
それは、紐が滑るような音だった。第一の来襲はエルの背後にあるテラスからで、音の発生源がテラスに降り立つのと、エルが振り返り様に地面を蹴り上げ、背後に降り立ったその人物の太い首を両足で挟みこむのは、ほぼ同時だった。
エルは来襲者の首を両足で抱え込むと、全体重を掛けて身体を捻り、掴まえた頭部を勢いのまま床へと叩きつけた。
重い響きが床を震わせ、脊髄か首の骨が折れたらしい敵が、抗う術もないまま一瞬で床の上に伸びた。刺客が手に持っていた鉄製の槍が、ガランと音を立てて床の上を滑り落ち、スウェンの足元まで転がる。
エルは体制を整えて初めて、敵の姿を確認した。
飾り気のない真っ白い軍服を着た身体は、東洋人ぐらいかと思われる男のものだったが、その首は灰色の大きな鼠の顔をしていた。