「信じられないけれど……この支柱、移動しているんだよ。さっき僕がチェックした位置にいないんだ。画面の表示角度が変化しているのかなと思ったんだけど、まさに今移動しているみたいで」
その時、スウェンが不意に顔を上げた。その瞳が、宙を見つめたまま大きく見開かれる。
「――何かが来る」
穏やかな海風に乗って、遠くから人々の賑やかさがぼんやりと伝わって来るが、来襲の足音はまるで聞こえない。しかし一同は、スウェンから数秒遅れて、強い敵意を覚えて身構えた。
エルは、首の後ろが焼けるような殺気を察知していた。自分に対して危害を加えようとする者の気配に五感を研ぎ澄ませながら、ちらりとクロエへ目配せすると、クロエが一つ肯き、ボストンバックを隅まで引っ張ってベッドの下に潜り込んだ。
唐突に風が止んだ。
遠くから聞こえていた喧騒も耳から遠のき始め、セイジが辺りを警戒しつつ、遠慮がちに声を発した。
「――妙な噂があったが、もしやそれが、この世界の『設定』なのだろうか」
「君が、さっき報告してくれたやつだね?」
ナイフをズボンに仕込みながら、スウェンが確認するように尋ね返した。
エルが思わず問うように視線を向ければ、セイジが「実は」と説明した。
「この島には、秩序に反した者を狩る、正しい人間の目には映らない『島神の遣い』がいるらしい」
その時、スウェンが不意に顔を上げた。その瞳が、宙を見つめたまま大きく見開かれる。
「――何かが来る」
穏やかな海風に乗って、遠くから人々の賑やかさがぼんやりと伝わって来るが、来襲の足音はまるで聞こえない。しかし一同は、スウェンから数秒遅れて、強い敵意を覚えて身構えた。
エルは、首の後ろが焼けるような殺気を察知していた。自分に対して危害を加えようとする者の気配に五感を研ぎ澄ませながら、ちらりとクロエへ目配せすると、クロエが一つ肯き、ボストンバックを隅まで引っ張ってベッドの下に潜り込んだ。
唐突に風が止んだ。
遠くから聞こえていた喧騒も耳から遠のき始め、セイジが辺りを警戒しつつ、遠慮がちに声を発した。
「――妙な噂があったが、もしやそれが、この世界の『設定』なのだろうか」
「君が、さっき報告してくれたやつだね?」
ナイフをズボンに仕込みながら、スウェンが確認するように尋ね返した。
エルが思わず問うように視線を向ければ、セイジが「実は」と説明した。
「この島には、秩序に反した者を狩る、正しい人間の目には映らない『島神の遣い』がいるらしい」