「疲れはないか?」
「ないよ」

 エルは答え、クロエを抱き上げて室内に戻った。テラスで冷えた身体を温めるべく、一旦クロエを下ろして、準備運動をするように身体を伸ばし始める。

 風呂から上がったログが、濡れた髪を手でかき上げつつエルを見て、怪訝そうにぼやいた。

「なんだ。やる気満々って感じだな?」
「俺は、邪魔にならない程度にお前らに付き合うつもりだったから、いいんだよ。ただ、ここからは本気出さなきゃなって、そう思ったんだ」

 ログは冷蔵庫の中をあさりながら「ふうん」と気のない返事をした。瓶に入った珈琲牛乳を取り出し、一気に飲み干す。

「そういうのを、心境の変化っていうんだろ」
「お前、俺に喧嘩売ってんの?」

 その様子を眺めていたセイジが、控えめにログの名を呼んだ。しかし、スウェンのようにスマートに仲裁に入れる性格ではなく、途端に首をすぼめて「その」と言葉を詰まらせる。

「ログは、身体は平気なのか?」
「ああ、問題ない」

 ログは空瓶をカウンターの上に置き、チラリとセイジを見やった。

「俺は問題なく動ける」

 その時、スウェンが「やっぱり変だ」と立ち上がった。ログが「何が変なんだ」と短く尋ねると、彼は探査機のブラウザに目を落としたまま口を開いた。