「そんなに重要な事でもないんじゃ……?」

 これまでの沈黙の理由を知って、エルは途端に呆れてしまい、馬鹿を見るような眼差しを向けた。ログは普通に気付いていたようだし、そもそも、生きる上で特に必要な感覚とも思えない。

 エルの視線の先で、スウェンが両手で顔を覆い、深い溜息をもらした。

「どうしよう。知っても尚、今の君が少年にしか見えないなんて……あの時は、きちんと女の子に見えていたはずなのに」
「そんな事より、この後どうするの?」
「そんなことって――」

 スウェンが絶句し、項垂れた。

「……そうだね、とりあえず本題に戻ろうか。さっき確認した限りでは、支柱との距離はそんなになかったはずだから」

 彼はそう続けると、後ろポケットから探査機を取り出した。しかし電源を入れるなり、スウェンは、手元のブラウザを見据えて眉間に皺を刻んだ。

 エルは、テラスで腕を伸ばした拍子にセイジと目が合い、「なに?」と、半ば条件反射のように問い掛けた。