ハイソンは、叫んだ拍子に急激な胃の痛みを覚えて呻いた。ひどい緊張と責任感から来るストレスだ。彼を連れたクロシマが、肩越しにハイソンを眺めてニヤリとした。

「良かったじゃないっすか。持ち前の胃痛が、あんたを起こしてくれてるんですよ」
「お前、それは上司に対する慰めのつもりか? いつかクビにしてくれる……ぐぅッ、腹が痛い」
「クビにするのにも、書類上の手続きが大変っすもんねぇ」

 クロシマは力なく笑い、それからハイソンの腕を自分の肩に回させた。

「歩けそうっすか?」
「ぐぅぅ……胃痛と格闘中だよ、見たら分かるだろ。全く、たまったもんじゃない」
「あはは、ミルクティーは拾っておきましたよ。胃薬もちゃんと用意してますんで、もうちょっと辛抱していて下さい」

 ハイソンは、自分をほとんど背負うように歩くクロシマを見た。しっかりとしたクロシマの首の後ろには、薄らと汗が滲んでいた。

「そういうお前は、大丈夫なのか」

 思わず声を掛けると、クロシマが弱り切ったハイソンを見て、小馬鹿にするような顔をした。

「さぁてね。俺、実は極度の不眠症なんすよ。人が沢山賑わっている中じゃなきゃあ、ぐっすり眠れない性質なんです」

 ハイソンは眠気を頭から振り払いつつ、どうにか足に力を入れて歩く事に専念した。「そっか、なるほどな」ハイソンが強がって苦笑して見せると、クロシマも空元気を返した。

「だからと言って、勤務中の居眠りは許可しないからな」
「ありゃりゃ、手厳しいなぁ」

 自分よりも重いハイソンを支えるクロイマの首筋や額には、粒の汗が滲み始めていた。