「大丈夫っすか? ハイソンさんまで眠りに落ちないで下さいよ」
「俺までって、――何かあったのか?」

 クロシマは、ハイソンが立ち上がれるよう手を貸した後、少し肩をすくめてみせた。

「皆ひどくお疲れみたいで、カフェインで頑張っていますよ。既定の勤務時間は、そろそろ終えますし、他の連中は連日延長戦ですから、仮眠を取る奴が続出している感じですかね」

 クロシマは何でもないというように話したが、笑った顔には力がなかった。安堵した拍子に気が抜けたのか、目尻には疲労皺も浮かんでいた。

 ハイソンは現状を疑った。そもそも、クロシマは勘が良い男だと、ハイソンは誰よりも一番それを知っているもりだ。

「クロシマ。お前、思った事を言ってみろ」

 理由を聞くまで動かないぞ、というハイソンの様子を見て取ると、クロシマが溜息を一つ吐いて、視線をそらしながら話し始めた。

「あんたがラボを出て行った後ですが、まぁ皆それなのに疲れていたし、眠いって言う本音の交わし合いは気にならなかったんですけどね。あなたの事だから、胃薬がもっと必要になるんじゃないかと思って、俺は北の控室に向かった訳ですよ。そしたら皆倒れてた。ひどく眠いから少し休ませてくれないかと、皆口を揃えて、そう言うんです。マリアンヌとジョンの方を見に行くと、二人ともブラック珈琲を飲んで頑張っていましたが、警備室や廊下で倒れて寝込んじまっている奴らもいるし、これは尋常じゃないなぁと」