ログ達は、今頃どうしているだろう。無事に、今回の五番目のセキュリティー・エリアも抜けられるといいのだが……

 考え出すと、『仮想空間エリス』では、どんな事が起こり得るのか予測すら立てられない状況に、不安ばかりが募る。

 マルクさんは、いったい何を考えているのだろう?

 どうして、こんにも不安に駆られるのかと考え込むと、胃痛が戻って来る。

 今回大佐から任命され、仮想空間についてスウェン隊長に伝えた時、彼があまり顔色を変えずに肯いてくれたものだから、プログラムの破壊も実現可能だろう、と安心してしまったのは確かだ。しかし、早急に判断を求められた状況での一連のやりとりを、ハンソンは今更になって後悔もしている。

 ログの所属している部隊について、ハイソンは詳しくは知らない。

 大きなプロジェクトで大惨事があっただとか、彼らのこれまでの仕事や黒い噂については、いくつか聞いた事があったが、本人を前にして見ると、そこまで恐ろしいとも思えなかった。冷酷無情と恐れられ、最年少で隊長となったスウェンについても、ちょっと難しい所はあるが、悪い人間ではないとも思うのだ。

 特にハイソンは、スウェンの判断力や分析能力を、大きく買っていた。一部の機密機関に関与しているメンバーから、彼の頭脳についての噂も聞いている。

 成功の確信が持てない任務について、あの『スウェン隊長』は、絶対に首を縦に振らないのだそうだ。危険が伴う場合は、他の部署から盾に使える部下を必ず引き連れた――らしいという、冷酷極まりない噂まである。

 ハイソンは、これまでスウェンとはほとんど面識がなかった。ログが定期健診に訪れるようになった際、廊下ですれ違う事が二、三回ほどあり、その時少しだけ言葉を交わしてみた事があるだけだ。