「いいかい、少年。自分の恐怖を少しでも減らしたいのなら、敵を倒しなさい。出来るだけ銃弾を避けながら、確実に相手を仕留めるんだよ」

 男がライフルの引き金を引いた。一瞬、薄暗くなった室内で火花が散ったように見えたが、風を切るような発弾音に対して空気の振動が強く、エルが思わずビクリと顔を顰めている間に、男は発砲した方向へと走り出してしまった。

 近くの床に着弾があり、砕かれた床の一部が、エルが握りしめていた拳銃にコツンと当たった。

 自分が隠れている場所が、敵側に特定されてしまっているのだ。動かなければ、とエルは自身を奮い立たせて走り出した。

 消炎と瓦礫のために悪くなっている視界に目を凝らし、辺りへ素早く目を走らせる。左前方に長い銃口武器を持った男が一人、右奥には小振りな連弾銃を持った男が一人、待ち構えていた。

 別テーブルの影に入り込み、エルは敵に向けて銃口の照準を合わせて引き金を引いた。