四番目のエリアで報告を受けた後、ハイソンは――トイレの中にこもっていた。

 胃痛が絶えないのだ。既に腹痛も併発しており、下しているわけではないがトイレの往復数が格段に増えた。胃の痛みと同時に、下腹部にまで激痛と悪寒が走っている。もはや耐えられない緊張感と重圧が、彼の小さな精神を押し潰そうとしていた。

 ハイソンは本日、何度目かも分からないトイレの中で、これまでの状況を整理した。

 溜息をこぼすたびに、胃がキリキリと痛んだ。ひどいストレスである。

 スウェン率いる少数部隊は、無事に四番目のセキュリティー・エリアを突破し、五番目のセキュリティー・エリアに突入した。

 彼らが仮想空間に入ってから早半日、良い調子であるのか遅れているのか、ハイソンは焦りを覚える。現地入りを果たしていない所長の方でも、色々と調べてくれているらしいが――

 そういえば所長は、巻き込まれたらしい少年について、やけに知りたがっていたなと、ハイソンはふと思い出した。


 稼働を続けるプログラムの動きがおかしい事に気付いたのは、スウェンから三番目のセキュリティー・エリアを突破したという報告を受けた後だった。プログラムの監視モニターに、妙なバグコードが認められたのだ。


 破壊と再構築が繰り返される解析データには、これまで見た事のないコードが派生していた。それは、全く意味をなさない壊れたキー重複のように、でたらめな文字列だった。

 それは、五番目のセキュリティー・エリアに突入してからは、ピタリと出なくなった謎のデータ・コードではあるが、ハイソンは気になって仕方がなかった。

 スウェンから、チームのメンバーが正体不明の人物と接触したらしいと報告を聞いた後、何者かが介入しているのではないか、とハイソンはそんな事を考えもした