スウェンが眉根を寄せ、「どうしたのさ」と首を傾げた。

「エル君も、そろそろ上がる頃じゃない? それに浴室の中は結構広かったし、ほら、日本の文化で『背中を流し合う』とかあるじゃないか」

 その時、浴室からセイジの悲鳴が上がった。少年時代からセイジの面倒を見ていたスウェンにとって、温厚で控えめなセイジが、驚いて声を上げる事とは想定外だった。

 ログが舌打ちして、ソファから飛び出した。スウェンが数秒遅れで彼の後を追い、浴室に向かって駆け出す。

「どうしたの、セイジッ」
「無事かッ」

 ほぼ同時に、二人は開け放された脱衣所に飛び込んだ。

 セイジが浴室の入口に立ち尽くし、一歩後退する姿勢のまま硬直していた。セイジはどうやら、律儀にも風呂に一緒に入っていいか了承を得ようとしていたらしく、衣服は身に着けたままだったので、ログは知らず、安堵の息を吐いていた。

 開かれた浴室からは、良い香りのする湯気が溢れていた。浴室の中を見つめたまま、セイジは完全に停止している状態だった。

 ログとスウェンは、セイジの視線の先を追って浴室の中に目をやった途端、彼と同じように顔を強張らせてしまった。

 芳しい湯気が立ち込める浴室内からは、シャワーの音が響き渡っていた。身体についた泡を洗い流し始めていた華奢な少女の、細く白い肢体が、湯気と泡の間から三人の男の目に飛び込んで来る。