「僕が行って来るから、君は少しでも体力を戻しておいた方がいい」

 ログは、答えずに目を閉じた。目を閉じた暗闇の向こうで、スウェンがソファから立ち上がり、向こうへと歩いて行く気配を追った。

 室内を通り抜ける風が、少しやわらいだ。

 ログは気だるい眠気の中で、口の中に残る安っぽいビールの味を思った。一階にカクテル・バーがあるのなら、そちらを試してみる方が気晴らしにはなるだろう。その際に、エルも誘ってみようかと考えて、無意識に彼の口許が緩んだ。ガキだからと馬鹿にしたら、手足を出して反論する彼女の姿が容易に想像出来た。

 ログはソファに横たわったまま、玄関辺りでやりとりをする、スウェンとセイジの話し声に耳を傾けた。

 しばらくすると、一組分の足音が近づいて来たので、ログは目を開けた。戻って来たスウェンが、テーブルの上に買い物袋を置き、リンゴやパン等を取り出し始めた。

「セイジはどうした」
「浴室に向かわせたよ。先に汗を流した方がいいだろうと思って」
「おい、待て。まだ、あいつが入っていただろ」

 嫌な予感を覚え、ログは身体を起こした。