「そもそも、仮想空間じたいが現実的じゃない」
「だからこそ、隠し通したいんじゃないの、軍は。解明されていないモノに手を出して、気付いたときには手遅れで大慌てで隠ぺいする。奴らのお得意のやり方さ。ローランドやバークス、ジェイミーも結局は助からなかった。『成長する翼計画』なんていう未知の細胞を、あいつらは――」

 その時、ログがスウェンの膝を軽く叩いた。スウェンは我に返って、すぐに口をつぐんだ。

「……済まない、酔っている訳ではないのだけれど。結局、過去の過ちを繰り返すんだなと思うと、残念でならなくて」
「報告を受けた限りじゃ、仮想空間の確立も詭弁だったろ。俺は利口じゃねぇ。お前が良くない類のモノだと判断したんなら、一緒に潰すまでさ。ここには何かがあるんだろうが、深く関わるつもりはねぇよ。俺は所長に助けられたから、今度は俺がアリスを助ける。それだけだ」

 ログはそう言うと、ソファに寝そべった。

 スウェンは、勢い良くビールを喉に流しこんだ。味はとても鮮明だったが、やはり一向に酔えるような気配はなかった。