戦いの場では、少しの隙が命取りになる。今は迷ったり、過去を思い出している場合じゃない。エルは生きて、クロエと合流しなければならないのだ。

 エルは、自分が置かれている状況を確認しようと目を走らせたところで、ふと、縁が破損した隣のテーブルに、一人の男が座っている事に気付いた。

 エルと同じように、テーブルを背に座りこんでいたのは、先程見掛けた金髪碧眼の外国人だった。彼の足元には物騒な大型銃と使用済みの弾が散乱しており、彼は悠長に口笛を吹きながら、慣れたように改造されたライフルをセットしていた。

 男は数秒もしないうちに、エルの視線に気付ついて振り返った。「おや」と楽しげに呟き、まるで、そこのコンビニで知り合いにでもあったような落ち着いた顔を向けてくる。

「君、やらなきゃ殺られるよ。まぁ僕は後方支援っていう楽な役回りだけれども。とりあえず、死にたくなかったら、今は自分の身は自分で守るしかない」
「待って。殺られるって一体どういう――」

 エルが隠れているテーブルの脇に着弾し、爆音が起こった。

 金髪の男が仕上げた改造ライフルを構え、テーブルの脇から狙いを定めた。