エルは、疲労感を覚える大人達に気を遣って、彼らに先にシャワーを浴びてもらおうと考えていたのだが、部屋に案内された際に、セイジはスウェンに一言告げて部屋を出て行ってしまっていた。

 ログは、先程からソファに腰を降ろしており、すぐには風呂に入る気配もなかった。彼がビール缶に手を伸ばしたのを見て、エルは、自分が先に入った方が時間の無駄がないだろうと考えた。

 セイジは、武器の手入れに必要な物と情報を集めてくるとの事だったので、戻りがどのくらい後になるのか予想もつかない。

「そうだね。セイジは、もう少し時間がかかるかもしれないな」

 エルの心情を察したように、スウェンが考えるように答えて、テーブルの上の缶ビールを一つ取って「先に入っておいでよ」と言った。

 スウェンは、一度だけ開きっぱなしの出入り口の方を確認し、それから缶ビールのプルタブを折った。エルはその音を聞きながら、「おいで、クロエ」と彼女の名を呼んだ。

 エルが、クロエを足元に従えて、長ソファの横を通り過ぎようとした時、ビールを半分ほど豪快に飲んだスウェンが、思い出したように「エル君」と呼び止めた。