しばらく経った頃、先に風呂に入っていたスウェンが出て来て、タオルで頭を拭きながら備え付けの冷蔵庫を探った。彼は「ビールが入ってるよ」と嬉しそうな声を上げると、ログの方へ顔を向けた。

「ログ、君も何か飲むかい?」
「お前、飲む気なのか?」
「さっき飲料水を呑んでみたけどね、仮想空間とは思えないほど美味しくてさ。酔う事はないだろうけど、アルコール類も試してみたいじゃないか。僕らは、想定以上に仮想空間内に閉じ込められている訳だし、何事にも息抜きは必要だろう? ――まぁ僕としても、色々と考えたい事があってね」

 広いリビングには、ハイビスカス柄をした長ソファが向かい合う形で置かれており、スウェンは、ログの一つ向こう隣へと腰かけた。

 ガラスのテーブルに並べられたビール缶は全部で六缶あり、すべて銘柄が違っていた。

「面白いよね、ここの冷蔵庫。同じビールが一つとないんだよ。ビンタイプの物もあったけど――あ、エル君、中に牛乳と缶ジュースもあったから、君も好きに飲むといいよ」

 声を掛けられ、エルは振り返り様にログとスウェンを見やった。