「でも、エル君って免許が取れる年齢だったんだねぇ。僕は、そこにびっくりしちゃったよ」
「信じてなかったのッ? 俺、子どもじゃないって初めから言ってたけど!?」

 すると、スウェンが数秒間、笑顔のまま沈黙した。その後ろでは、セイジが「え」と出た声を押さえるように、さっと口に手をあてて黙りこんだ。

 しばらくして、スウェンが唐突に踵を返した。

「さっ、ここから向こうが次のエリアだよ。皆、心して突入するように」

 爽やかな笑顔で逃げられた。エルは、心の中で「畜生」と嘆いた。長い付き合いをする訳でもないのだから、実際年齢を明かす必要はないのかもしれないが、こう見えても二十歳であるのだ。

 本当の年齢ぐらい、訊いてくれたっていいんじゃないか?

 次の機会があれば、真っ先に年齢を主張しよう、とエルはそう心に決めた。


 目の前には、相変わらず暗い国道が続いていたが、スウェンが宙に触れると、途端に景色は光りの壁に遮られた。

 まるで水が立っているように、その表面は滑らかに波打ち、眩しい光を反射させていた。

「ここを乗り越えれば、五番目のセキュリティー・エリアだ。空間としての完成度は、ここから高くなるらしいから、十分気を付けていこう」