「ハーレーの運転だよ。普通、お前ぐらいのガキなら、運転しないような代物だろ」
「俺はガキじゃない――まぁ、オジサンがハーレーを持っていたから、免許取った後に運転させてもらったんだよ。オジサンの移動手段って、あの頃にはハーレーだけだったから」
「ずいぶん良い趣味した『おじさん』じゃねぇか」

 そう指摘されて、エルは少し考えた。

 親族の人は彼を嫌っていたようだけれど、エルは、オジサンが大好きだった。彼を褒められるのは素直に嬉しくて、エルは「うん」とはにかんだ。

 バイクを走らせながら、エルはオジサンとの思い出を振り返り、ログにちらりと語った。

「オジサンは、すごく良い人だったよ。使い古しの道具も、全部大事にする人だったよ。新しい物は、なかなか買わない人だったなぁ」

 冷蔵庫やテーブルや箪笥など、あの家にあったものは、ほとんどが年代物だった。早くに亡くなった妻との思い出を、薄れさせたくないような一面もあった気がする。

 車庫に入っていた動かない車も、結局は彼が死ぬまで廃車される事はなかった。妻と、いつも二人で乗っていたアメリカ製の軽自動車だ、とオジサンは語っていた。