「運転には問題ないって話だろ? なら問題ないじゃねぇか、引き続きさくっと走らせろ」

 エルは舌打ちした。振り落としてやろうかとも思ったが、彼が抱えるボストンバックの中で、気持ち良さそうに眠っているクロエを想うと、行動には移せなかった。

 少し先を走っていたスウェンとセイジが、気遣うようにこちらを振り返り、愛想良く手を振った。

 現状、四人はノーヘルであり、一台も車のない国道で信号指示などお構いなしに走り続けていた。どこから突っ込んでいいのか分からず、エルは引き攣った愛想笑いで、二人に応えた。

 サイドカーでログが頭の後ろに手を置き、欠伸を一つもらした。

「俺だってな、ちょっとは疲れてんだよ。気を利かせて少しは休ませろ」
「お前は、スウェンを見習うべきだ」

 エルは反論したが、運転は安全に続けた。ログが持つ破壊の力が、体力や精神力を消費するらしい事については、少し配慮してやっているつもりだった。

「――慣れてるな」

 唐突に、ログがそうぼやいた。風が耳元を切る音が大きい為、エルは「なに?」と声を荒上げて訊き返した。