エルは、ひとまず肯いておく事にした。ホテルマンの心情を察する事は出来そうにもないので、放置の方向でいいだろうと判断する。

 ホテルマンの顔が「――とても、名残惜しいものです」と囁きを残し、エルから離れた。

 振り返ったエルは、驚いた顔をしたスウェンと目が合った。スウェンは、どこか呆気にとられたように口を開いていた。

「まぁ、なんというか――なんだか君達、短い間に随分仲良くなったみたいだねぇ」

 エルは、「ああ、多分……」と考えられる理由を思い浮かべつつ、隣のホテルマンを盗み見た。ホテルマンは、セイジとログに向かって手を振っている。

「……なんというか、どっちも接近戦タイプだったみたいで」

 思わず、本音がエルの口をついて出た。

 予想外の返答内容に、スウェンが「は?」と素っ頓狂な声を上げた。エルはハッと我に返り、慌てて「なんでもないッ」と取り繕った。

 スウェン達は、自分については何も知らないのだ。知っている仲の方が気楽ではあるが、彼らとの距離感を計り間違えてはいけない。