「そんなに俺は弱くないって行ったじゃん。クロエは絶対に取り戻すって、そう決めていたもの」

 エルのボストンバックから、クロエが顔を出して「ニャーン」と楽しげに鳴いた。

 スウェンとセイジは、何食わぬ顔でエルの身体に傷がない事を確認した。しかし、衣服に少々の戦闘の残りを感じ、すぐにスウェンが眉根を寄せた。

「エル君、もしかして闘ったのかい?」
「馬鹿でかい奴が一匹出てきたけど、あいつと一緒だったから平気だった」

 エルは、後ろのホテルマンを指した。

 風呂敷を背中に背負ったホテルマンが、話す機会を設けられたと気付き、セイジとスウェンに向かって大きく手を振った。

「無事でなによりでした、親切なお客様方! またお会いできて、私はとてもハッピーな気分ですよ!」
「え、ああ、そうだね……」

 スウェンは、途端に笑顔を引き攣らせて一歩後退した。ホテルマンは胡散臭い張り付いた笑顔のまま、一人ケラケラと笑い出してしまい、何か嬉しい事でもあったのだろうかと、スウェン、ログ、セイジは目配せした。