戦場下や、失敗の許されない任務で、一時の感情は命取りになる。そう学んでいたから、セイジは仲間や上官を責める事は出来なかった。

 それでも、セイジの良心は、後悔の痛みを忘れられないでいた。きちんとお別れをしておけば良かったと、その相手が既に他界したのだと後になって知るたび、静かな諦めに似た胸の痛みに苛まれるのだ。

 ログが「ふん」と鼻を慣らし、面倒臭そうに頭をかいた。

「スウェン隊長が待つって決めたんなら、俺も付き合うさ。あのガキには協力すると断言されたし、ああ見えて結構根性もあるから、十分役にも立つだろ」

 スウェンは、何事か言い掛けてログを見つめ返したが、結局言葉にはせず、最後は困ったように微笑んで、他まだ二迷い続ける視線をそっとそらした。


 しばらく待った頃、ようやく二組の足音が聞こえ始めた。ログとスウェンも足音に気付いたが、一番に顔を向けたのはセイジだ。

 セイジは振り返り様、到着したばかりのエルと目が合った。日本人にしては明るい茶色の色素が際立つ、大きな瞳を持った華奢な顔をしたエルと、数秒ほど視線が絡まった。

 不意に、セイジは強い既視感を覚えた。頭がグラリと揺れるような、鈍い痛みに目が眩んだ。それは本当に一瞬の事で、セイジは自分が思い出しかけていた事について、すぐに忘れてしまった。