「マルクは、『エリス・プログラム』の身体を造るらしいけれど、どういう意味だと思う?」

 スウェンは腰を下ろすと、ずっと考えていた事を二人の部下に問いかけてみた。

 途端にログが眉根を寄せ、「お前こそ、どう考えてるんだ」と問い返した。

「正直、僕にもよく分からない。『仮想空間エリス』には、プログラムを稼働させているエネルギーの中心体があるから、それを維持するために、人の身体が材料として必要なのだと考えていたんだけど」
「そもそも、ここは本当に機械が造っているだけの世界なのか? 俺はな、意思がある連中を踏み越えているような、嫌な気がしてならねぇぜ」

 ログは、そう言いながら鼻白んだ。

「ここは作り物の世界だろう。それなのに、まるで人間みたいな意思や感情を持ったエキストラが登場する時がある。――例の人形が『エリスの身体』と言った時は、まるで一人の女を作り上げているようなイメージで、正直気分が悪かったな」
「プログラム自身が、一人歩きする為の身体か……まるでSFかホラー小説みたいだなぁ。仮想空間という代物に関しては、謎が多すぎるのが厄介な点だよ」

 スウェンはそう認め、立てた膝の上で手を組んだ。